はじめに 家並役とは、「家」ごとに夫役(労働)や諸公事(年貢以外の現物)を負担する役である。この家並役は、(日本)中世後期の畿内近国に出現し、近世には全国へと展開していった・・・云々。 学術論文では、往々にしてこのように表現するほかないが、…
「反故」「反古」という文字を見たとき、現代日本人の多くは「ホゴ」と読むであろう。 だが、日本中世史の研究者は一拍置いた上で、「ホウグ」と読む可能性が頭の中をよぎる。というのも、中世史料(売券等、権利証文に多い)では仮名にて「ほうくたるへく候…
歴史上の事件・事故・災害を現在に生かすことができるか。 また、現実の出来事から歴史を再解釈することができるか。 どちらも一筋縄にはいかない問いであり、むしろ安易に結びつけることに慎重にならねばなるまい。これを大前提に置いた上で、一つ目の問い…
唐突な告白だが、私は北海道の出身だ(正確に言えば、出身地の一つは北海道である)。 日本史の研究の界隈では、案外「地元の歴史」を調べている方は多い。日頃暮らす地域のかつての姿や己のアイデンティティを追い求めることは、十分に研究の動機になりうる…
「ロンドン橋落ちた」"London Bridge Is Broken Down" は一度耳にしたら決して忘れない英国の童謡である。歌詞の内容は、壊れたロンドン橋を様々な材料を用いて新しい橋を建設するというものである。 実は、このロンドン橋は「落ちた」ことがないらしい。か…
「親父にも打たれたことがないのに…」 という台詞はたまに耳にする。家族よりも関係が希薄な間柄で暴力が行使された際に使う言い回しである。ただ、近年は親父も子を叩かないのが一般的であり(逆に叩いていたら大問題)、むしろ慣用表現としての使用が多い…
歴史家の苦悩とは何たるか。 ある研究者が講義で「歴史学とは時代を区分することである」と述べていた。本当にそうであるのか、という議論は置いておくとも、歴史学における時代区分の重要性は十分に認められるところであろう。 まるで自明の存在のような「◯…
境界域の歴史に関する最近の所感を記す。 まず、なぜに境界地域に己が着目するに至ったかを簡単に述べよう。 一つ大きな要因は昨年以来、境界史に触れる機会が多かったことによるだろう。2021年7月4日に歴史学入門講座にて村井章介による「境界史の構想」の…