T.Konishiのブログ

歴史とか本とか旅行とか

2022-01-01から1年間の記事一覧

境界域の歴史③ー北方民族世界のもう一つの地図・北海道編ー

唐突な告白だが、私は北海道の出身だ(正確に言えば、出身地の一つは北海道である)。 日本史の研究の界隈では、案外「地元の歴史」を調べている方は多い。日頃暮らす地域のかつての姿や己のアイデンティティを追い求めることは、十分に研究の動機になりうる…

中世の日常/非日常①ー渡月橋が落ちた日ー

「ロンドン橋落ちた」"London Bridge Is Broken Down" は一度耳にしたら決して忘れない英国の童謡である。歌詞の内容は、壊れたロンドン橋を様々な材料を用いて新しい橋を建設するというものである。 実は、このロンドン橋は「落ちた」ことがないらしい。か…

中世人の気持ち①ー孫ぶたれ、爺嘆くー

「親父にも打たれたことがないのに…」 という台詞はたまに耳にする。家族よりも関係が希薄な間柄で暴力が行使された際に使う言い回しである。ただ、近年は親父も子を叩かないのが一般的であり(逆に叩いていたら大問題)、むしろ慣用表現としての使用が多い…

境界域の歴史②ー揺れる時代区分、歴史家の苦悩・続奄美大島編ー

歴史家の苦悩とは何たるか。 ある研究者が講義で「歴史学とは時代を区分することである」と述べていた。本当にそうであるのか、という議論は置いておくとも、歴史学における時代区分の重要性は十分に認められるところであろう。 まるで自明の存在のような「◯…

境界域の歴史①ー支配における中心と周縁の問題・奄美大島編ー

境界域の歴史に関する最近の所感を記す。 まず、なぜに境界地域に己が着目するに至ったかを簡単に述べよう。 一つ大きな要因は昨年以来、境界史に触れる機会が多かったことによるだろう。2021年7月4日に歴史学入門講座にて村井章介による「境界史の構想」の…